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福岡地方裁判所 昭和51年(わ)146号 判決 1976年8月05日

本籍

福岡市西区大字金武五二番地

住居

右同所

会社役員

樋口徳雄

大正二年三月一日生

本籍

福岡市西区大字金武五二番地

住居

右同所

会社役員

樋口徳一

昭和一六年一月九日生

右両名に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は検察官滝口知克、中倉章良出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人樋口徳雄を罰金七〇〇万円に、被告人樋口徳一を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人樋口徳雄において右罰金を完納することができないときは、金四万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

被告人樋口徳一に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人樋口徳雄は、福岡市西区大字金武五二番地に居住し、同区大字有田字高田五八六番地において、樋口産業の名称で砂採取販売業を営んでいたもの、被告人樋口徳一は、被告人徳雄の長男で、同人に代つてその業務全般を掌理していたものであるが、被告人徳一は、被告人徳雄の業務に関し、同人の所得税を免れようと企て、

第一  被告人徳雄の昭和四七年分の真の所得額は二、七〇四万五〇二円で、これに対する所得税額は一、二三六万二、八〇〇円であつたのにかかわらず、公表帳簿に架空経費を計上し、これを未払金として負債科目に計上するなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四八年三月一三日、同区百通一丁目五番二二号西福岡税務署において、同税務署長に対し、昭和四七年分の所得金額は八五一万三、七九二円で、これに対する所得税額は二一四万九、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の所得税一、〇二一万二、九〇〇円を免れ、

第二  被告人徳雄の昭和四八年分の真の所得金額は六、八三五万九、九四二円で、これに対する所得税額は三、八八四万円であつたのにかかわらず、前同様の不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日、前記西福岡税務署において、同税務署長に対し、昭和四八年分の所得金額は二、八七二万一、三七三円で、これに対する所得税額は一、三三二万五、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の所得税二、五五一万四、八〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一、被告人らの当公判廷における供述

一、被告人徳一の検察官及び大蔵事務官(五通)に対する各供述調書

一、被告人徳雄の検察官及び大蔵事務官に対する各供述調書

一、原田孝代、後藤真一及び樋口敏明の大蔵事務官に対する各供述調書

一、被告人徳一作成の架空計上の仕入、運賃、賃貸料についてと題する書面及び簿外経費の支出についてと題する書面

判示第一の事実につき

一、浜川恵子の大蔵事務官に対する供述調書二通

一、被告人徳一作成の架空に計上した材料費運賃について(昭和四七年分)と題する書面

一、大蔵事務官作成の昭和四七年度分の脱税額計算書及び四七年分架空経費計上状況及び架空経費計上分の決済状況表についてと題する査察官調査書

一、押収してある総勘定元帳(四七年分)、売掛金買掛金元帳(四七年分)及び昭和四七年分所得税確定申告書各一綴(昭和五一年押第九七号の一、同号の三及び同号の五)

判示第二の事実について

一、被告人徳一作成の架空に計上した材料費運賃について(昭和四八年分)と題する書面及び上申書

一、大蔵事務官作成の昭和四八年度分の脱税額計算書及び四八年度分架空経費計上状況及び架空経費計上分の決済状況表についてと題する査察官調査書並びに架空請求書と経費計上状況等調と題する査察官調査書

一、押収してある総勘定元帳(四八年分)、買掛金未払金補助簿(四八年分)及び昭和四八年分所得税確定申告書各一綴(昭和五一年押第九七号の二、同号の四及び同号の六)

(法令の適用)

被告人らの判示第一及び第二の各所為はいずれも所得税法二三八条、一二〇条一項三号、二四四条一項に該当するので、被告人徳一については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、被告人徳雄については同法四八条二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で、被告人徳一については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人徳雄を罰金七〇〇万円に、被告人徳一を懲役八月にそれぞれ処し、被告人徳雄において右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金四万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置することとし、被告人徳一に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

昭和五一年八月一〇日

(裁判官 浦上文男)

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